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AIによる相続税調査

日本では、亡くなった人のうち約1割が相続税の課税対象になります。

基礎控除額は「3,000万円+法定相続人×600万円」が基本で、一般的な家庭でも家を所有していたり、生命保険に
5,000万円以上加入していたりすれば、課税対象になり得ます。
その結果、2024年には、全国で約16万人の相続人が相続税を申告しています。

一方で、国税当局はこの大量の相続税申告に対応しきれていません。

相続税の申告は原則として一度きりで、法人税や所得税のように継続的な申告がないため、税務署が「これは怪しい」と
感じた申告に対して即座に対応できる体制が求められますが、実際には人手不足で難しい状況です。

こうした状況を受けて、国税庁は2025年7月から、全国の税務署で「AIによる相続税調査」を導入しました。
この仕組みでは、各税務署が提出を受けたすべての相続税申告書データを国税庁に集約。そのうえで、申告者および
被相続人の過去の税務履歴や脱税歴、申告漏れなどと照らし合わせ、AIが「税務リスクスコア」を算出します。

このスコアに基づき、税務署は「調査を実施するかどうか」「実地調査にするか、電話での聞き取りにとどめるか」といった
判断を行います。AIが選定する調査先には、次のような特徴があるとされています。

・過去に大きな贈与があるが、贈与税の申告履歴がない
・名義が家族の預金口座だが、実質的に被相続人が出金・管理していた(名義預金)
・被相続人名義の不動産と実際の使用者が異なる
・死亡直前に預貯金や有価証券の動きに大きな変化がある
・海外資産や特殊な法人取引の記載がない、または極端に少ない

AIは、これまで気づかれなかったような“わずかな不自然さ”にも反応する可能性があります。そのため、今後の
相続税申告では、より正確で透明性の高い対応が求められます。

AIによる調査の強化は、「正しく申告をしている方」にとっては恐れるものではありません。むしろ、正直に申告を
行う人が報われる、公平な制度運用へとつながると言えるでしょう。

とはいえ、相続税の申告は非常に複雑で、一般の方がすべてを正確に行うのは容易ではありません。特にAI導入後は、
わずかなミスや記載漏れが調査対象となる可能性があるため、事前に専門家によるチェックを受けることが、安心への
第一歩です。

京都本部 秋山


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