自社株を後継者へ贈与したり、相続したりする際には、株式の評価額が税負担を左右します。現在、国税庁では、非上場株式の相続税・贈与税評価について、大きな見直しが検討されています。中心となるのは、会社規模によって評価方法を使い分ける仕組みから、純資産と収益力を基に評価する仕組みへの転換です。ただし、令和8年10月19日時点では検討段階であり、改正内容や適用開始時期が確定したものではありません。
現行制度では、原則として、大会社は上場会社の株価などを参考にする「類似業種比準方式」、小会社は資産と負債を基にする「純資産価額方式」、中会社は両者の併用で評価します。しかし、規模の大きな会社ほど相対的に評価額が低くなりやすいという問題が指摘されています。このため、会社規模の区分を廃止し、広く共通の評価方法を採用する方向で議論が進められています。
新方式の候補である「残余利益方式」は、帳簿上の純資産を出発点に、通常期待される利益を上回る収益力の価値を加える考え方です。例えば、純資産1億円、期待収益率を仮に5%とすると、通常期待される年間利益は500万円です。予測利益が800万円なら、初年度の差額300万円が残余利益となります。こうした利益を将来数年分計算し、現在の価値に換算して評価に反映します。第6回有識者会議では、過去5年間の正常利益を基に予測し、将来5年程度を評価に織り込む案が示されています。
現在、類似業種比準方式で低く評価されている会社では、評価額が上がる可能性があります。一方、収益力が低い会社では、簿価純資産を下回る評価も想定されています。ただし、現行の評価額より下がるかどうかは個別の比較が必要です。また、資産管理会社などに用いる純資産価額方式や、一定の少数株主に適用される配当還元方式についても見直しが検討されています。
現段階では、新方式の案をそのまま申告に使うことはできません。事業承継を考える際は、まず現行制度で自社株の評価額を把握し、利益や資産の状況を整理することが大切です。今後公表される通達や適用時期を確認しながら、贈与・相続の計画を検討していきましょう。
令和8年10月19日現在
出典:国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」第5回・第6回資料、タックスアンサーNo.4638
https://www.nta.go.jp/about/council/kenkyu.htm#nai-hyoka
埼玉本部 瀬島